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低身長
低身長
生まれてすぐの赤ちゃんの身長は約50cmです。1歳には75cmの身長となりますが、4歳児までは約10cmずつ、その後は約6cmずつの伸びとなります。思春期の第二次性徴が始まる少し前からスパートといわれる急激な身長の伸びが見られるようになり男子では13歳ごろ、女子では11歳ごろに成長速度がピークに達します。その後はだんだん成長の速度が鈍り、大体高校の3年間のうちに最終身長を迎えます。この成長のパターンは個人の代謝機能やさまざまなホルモン、生活のパターンや環境によって変わってきます。低身長は多くの場合、体質性低身長といって病的なものではありません。しかし、割合としては、少ないのですがそうではない治療の必要な低身長もあります。その場合は速やかに原因を特定して適当な時期に、例えば成長ホルモンなどの治療を開始する事が重要です。
低身長の原因には主として次のようなものがあります
- 体質性低身長
- 成長ホルモン分泌不全
- ターナー症候群(染色体異常)
- SGA性低身長
- 骨軟骨の異常
- 心理的、社会的要因
- 甲状腺機能低下症
成長曲線を書いてみましょう
治療が必要な低身長であるかどうかを考えるとき、まず成長曲線を書いてみることをお勧めします。
成長曲線をプリントアウトして、そこに母子手帳や学校の通知簿の記録から成長曲線を書いてみてください。
お子さんの実際の成長が標準の成長曲線からSDスコアで大きく逸脱している場合は何らかの病気が隠れていることが考えられますので、一度ご相談いただくことをお勧めします。また幼稚園や学校の先生は大勢のお子さんと接しているので、ご両親と違った目で客観的に判断ができる場合もあります。低身長が気になるようでしたらまず先生に相談してみるのもよいでしょう。
⇒標準成長曲線をプリントアウト(男子)
⇒標準成長曲線をプリントアウト(女子)
※PDFが開きます。PDF形式の文書をご覧いただくには、Adobe® Reader® プラグイン(無料)が必要です。お持ちでない方はこちらから入手できます。
検査
- 生まれた時の状況、家族の身長、これまでの成長の過程の経過や病気についての問診
- 現在の体の状況、診察
- 低身長の原因の検査
- レントゲン:骨年齢、骨系統疾患の有無
- 血液検査:成長にかかわるホルモン、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンのほか一般的な疾患について
- 負荷テスト
成長ホルモン治療
成長ホルモンは原則として毎日決まった時間に(寝る前というのが推奨されています)注射するのが普通です。自宅で注射することになりますので、ご家族やお子さんにそれなりの教育と練習が必要です。極めて少ない量をそれも極めて細い針で注射しますので、痛みはほとんどありません。病気や体格によって注射する量は少しずつ異なりますので、それは医師からの指示に従ってください。
★小さく生まれたことが大きな原因の場合(SGA性低身長)
出生時に小さかったことが低身長の原因となることがあります。SGAとはSmall for gestational age、お母さんのおなかの中にいる期間に相当する標準身長体重に比べて小さく生まれることを指します。身長と体重が100人中小さいほうから10番目以内(10パーセンタイルといいます)ですとSGAに入ります。そのうち9割は2~3歳までに成長が追いつきますが、3歳の時点で追いつかない場合、SGA性低身長と診断され治療の対象となります。
★染色体の異常
ここではターナー症候群について述べます。女の子の病気です。X染色体の(一部の)欠失によって低身長、翼状頸、外反肘などの外表上の特徴および二次性徴の欠如を主な症状とする症候群です。
成長ホルモン分泌不全より身長は低いことが多く-3.0SD以下(SDスコアの欄参照)のことも珍しくありません。診断は症状から疑いますが、染色体検査によって確定します。治療は低身長に対する成長ホルモン治療と二次性徴の欠如に対する女性ホルモン補充が主体になります。
また妊娠できない可能性が高いということは、やはり女性にとって極めて繊細な問題です。心理的なサポートが必要です。
これがそもそも病気なのか、それともこういう女性がいるということでよいのかということは、これはこれで極めて倫理的な問題です。ターナー女性という言い方がよいという考え方も確かにあります。
プラダー・ウィリ症候群というのもあって、これに対しても成長ホルモンの治療が認可されていますが、いろいろな問題があり、ここでは割愛することにします。
⇒ターナー症候群の成長曲線
★骨軟骨の異常
軟骨無形症状(軟骨異栄養症)では成長に必要なホルモンが分泌されていても、骨の方に問題があるため身長が伸びないと考えられています。胴体に比べて手足が短いのが特徴で典型的なケースは一目見て診断がつきますが、いろいろのバリエーションがあり、レントゲンを詳しく検討しないと診断がつかないケースもあります。
SDスコア
SDとは標準偏差ともいい、平均値からどれだけ離れているかという「幅」を示します。SDスコアはこの「SD=幅」と平均値を使用して、実際の数値がどの範囲にあるのかを計算する方法で、よく耳にする試験の「偏差値」とお暗示考え方です。例えば、0(ゼロ)SDが偏差値50、+1SDが偏差値60に当たります。一般的な目安としては、SDスコアが+2SD~-2SD、つまり偏差値でいう70~30の間であれば標準的な成長の範囲ということになります。
骨年齢
これによってお子さんがこれからどれだけ成長できるのかの潜在力を知ることができます。骨の成長が遅れていることは逆からいうと成長の余地があるとも考えることができます。
身長が伸びるということは骨が伸びることです。骨が伸びる仕組みは、次の通りです。骨の両端には柔らかい「骨端軟骨」という組織があってレントゲンでは隙間のように見えます。これを骨端線といいます。この部分が成長ホルモンや性ホルモンによって刺激されて軟骨細胞が増殖しそれが徐々に硬い骨になって変わっていくことで骨が伸びる、すなわち身長が伸びるということになります。骨年齢は手の骨のレントゲンで判定します。そのポイントは骨の数と形、指骨、尺骨、橈骨などの骨端核の大きさと骨端線の状態で判定します。手根骨は最初は軟骨ですからレントゲンに映りませんが、だんだん骨化してくることで数が増えていき、最終的には8個になります。骨端線の幅はだんだん狭くなっていき最終的には閉じた状態になります。この時点で成長が終わったと判定します。
負荷テスト
成長ホルモンの分泌刺激試験
ここまでの検査で成長ホルモンの分泌異常が疑われる場合は、成長ホルモンの分泌を促す薬剤を投与して、血液中の成長ホルモン濃度が上昇するかどうかを検査する必要があります。
成長ホルモンは常に一定の濃度で分泌しているのではなく、時間の経過ごとに血液中の濃度が異なります。このため、1回のみの検査では信頼性が低いため、30分ごとに2~3時間継続して採血を行う必要があります。
2つ以上の負荷テストで分泌の低下があると確定できたときに成長ホルモン分泌不全があるとの診断ができます。
その結果によって次のように方針を定めます。
- 成長ホルモンの分泌が正常:6ng/ml以上
→治療対象にはならない - 成長ホルモンの分泌が異常:6ng/ml以下
→治療開始 - 2つ以上の試験で1つだけが異常
→経過観察