どいキッズクリニック|舞鶴市浜の小児科・循環器小児科・アレルギー科

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コロナウイルスその7

今年の冬医療従事者に課せられた最大のミッションは、インフルエンザとコロナウイルスとの同時大流行の阻止であるのは明らかです。インフルエンザに対しては我々は今までの経験などからどうすればよいかはある程度わかっていて、インフルエンザの流行を予防する最大の武器はすでに効果が確立されている予防接種をできるだけ多くの人に適切な時期に受けていただくということです。皆さんが感染予防に努めていただいていることもあって、今の時点でどこからもインフルエンザで学校閉鎖であるとか学級閉鎖などの報道がないのは今のところ全体としてうまくいっているのではないかと考えられます。このままインフルエンザが流行らないでシーズンが終わればこのミッションは大成功であったということになるわけです。問題はコロナです。テレビなどで専門家といっていろいろ解説をされている先生方も誰一人全体像が見えている人はいないはずです。「正しく恐れる」という言葉がしばしば聞かれますが、それではいったい誰が「正しい」ことを知っているのでしょう。中には何の根拠もないのにトランプさんが大喜びするような「自然感染による集団免疫」などの自説を力説する方さえいます。何しろ人類が初めて遭遇するウイルスなのですから、何を言っても通るのかもしれませんが、科学の恐ろしいところは後で結果がわかるということだということを忘れてはいけません。「天網恢恢疎にして漏らさず」です。特にこの際科学的な知見の蓄積を軽視し、学術会議を誹謗中傷するのは極めて危険な兆候であると考えます。今のところワクチンも特効薬もありませんが、日本では死亡者数は大きく減少しています。それは軽症者が中等症者へそして重症化することを防止する方法がそれなりに確立されしかもそれが日本全国でレベルの差はあるにせよできるようになったことが大きな要因です。抗凝固療法、ステロイドの適切な使用、抗ウイルス薬として有効性が認められた薬の使用などです。酸素の使い方やECMOもこれに加えてもよいでしょう。ワクチンや特効薬といった派手な話ばかりがふわふわと飛び交っていますが、これらの科学に基づく地道な努力が結果を出しているのです。 閑話休題― 最近聞いた話ですが、血液学会の重鎮の先生方の集まりで「私のところの白血病の患者は一人もコロナにかかっていないけど君のところはどうだい。」と聞いたらみんな「そう言えば私の患者も誰も罹った人はいない。」という話だったそうです。まあ一人もというのはどうかなとは思いますが、子供から高齢者までやはりリスクが高いことを認識している人たちは十分気をつけ手洗いやマスク、それから三密を避けるなどの基本的に誰にでもできる予防法でなんとか感染から身を守ることができているようです。なるほど、ヨーロッパでは第2波を迎えており第1波を超える感染者数を記録しているにもかかわらず日本で感染者が少ないまま推移しているのはきっとそういうことがあってのことなのです。一方、新型コロナの流行が始まって10ヶ月が経ち、私たちもいい加減コロナに疲れてきているというのが正直なところかと思います。確かに自粛自粛ではやっておれないというのもそのとおりですのでGo toなんちゃらもしかたありませんが、冬を前にして日本も徐々に新規感染者が増加に転じており、これから冬を迎えるに当たって今一度感染対策を見直す時期に来ています。気を緩めるとすぐにヨーロッパの二の舞になるかもしれません。今年3月ごろの状況から比べるとこの感染症についての科学的な知見はウイルスの性質といった分野でも一定程度蓄積されてきました。このウイルスは気温が30度以上だと1日しか生きていませんが、気温が4度程度に下がると14日間生きているそうです。また乾燥するとウイルスが咳で飛散する距離も量も増加するといわれます。札幌の最低気温は今10度を切っています。コロナの感染者が最近北海道や東北で増加している、また若い人だけではなく中高年の方も増えているようです。これから全国的に寒くなり、屋内での換気が不十分になりやすくなる時期になります。京都府北部のような地域で換気をどうするかはとても大きな問題です。十分なことはできないにしても一日のうち何回かは短時間でも暖房をしながらの換気や換気扇を「強」にするとかはやらざるを得ないという意見が多く聞かれます。また湿度を50~60%にすることで空気中に漂うウイルスの量を格段に減らすこともできます。今後は現在のヨーロッパ諸国のような爆発的な流行とならないためにも、いろんな手を使って感染者の増加を抑えこまねばなりません。こういったことについての誰でもどこでも簡単にできる、より正しい提言をぜひ専門家の方々から頂きたいものです。幸い現在は、クラスターが断続的に発生している(この前は小浜とか高浜でもありました)ものの、全国的には「感染者のうち接触不明の割合」や「検査陽性率」の増加は認められず市中感染が広がっている状況ではありませんので、増加を食い留めることは可能なのではないか・・・と書いたのですが第3波ということも報道されはじめているようにこの1~2週間で状況は大きく変わってきているように感じられます。今のうちに ・屋内ではマスクを着ける ・3密を避ける ・こまめに手洗いをする といった、基本的な感染対策をもう一度見直しましょう。言い換えれば一般の方ができる科学的に根拠のある行動でなおかつ効果が確認できているのはこれくらいしかないのが現実なのです。もちろん消毒液を注射するとかイソジンがコロナに効くなどという与太話なんかには耳を貸さないでください。一番効果的な予防が個人の努力であるというのは悲しいことであるのは確かです。本来これ以上の感染のまん延を防ぐには政府や行政がPCR検査を増やすなど―医療に丸投げするのでなくーで介入することが必要です。専門家といわれる方々があんまり言及することはありませんが、医療が強く願っていることは検査体制の拡充と整備です。しかしながら個人の努力が有効であることは科学として確認できていることを今一度強調しておきたいと思います。長くなるのでこれで終わりにしますがもう一度くりかえします。カマラ・ハリスさんが言ったように良識(common sense)・または礼節(courtesy)と科学を信頼して真実と共に行動してください。今後の感染の状況は、少なくともその一部は私たち一人一人の行動によって決まるのだということを心に刻んでください。

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