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インフルエンザ
インフルエンザについて
インフルエンザに対してしばらく前までは、有効な薬というものは無いと考えられていました。インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされる病気なので、ウイルスに効く薬は無いというのが常識だったわけです。
現在でも、インフルエンザの最大の対応策はきちんとした形での予防接種であることは変わりがありません。
インフルエンザは鼻からの検査でせいぜい10分程度で診断が可能であり、インフルエンザを疑った時点で(発熱から一定程度時間が経過していないと陰性になることもあると言う欠点はあるにしても)検査をすることによって診断を確定することができます。診断を確定することにどういうメリットがあるかはつまりウイルスの増殖の仕方とかヒトの体内での活動の様子が解明されるにしたがって、ウイルスの増殖に何らかの妨害をするような物質によって結果的にウイルスをヒトの体から早く消し去ってしまうような薬=抗ウイルス剤ができたということにつきます。抗ウイルス剤を使えば1日か2日で症状がほぼ消失することが明らかになってインフルエンザという病気はまず脳症や肺炎といった一部を除いて克服されたかのように見えました。
しかしながら、そこに降って沸いた問題が近年話題となったタミフルによる異常行動(特に若いヒトの)ということです。その異常行動がインフルエンザに伴うものなのかそれともタミフルによるものなのだろうかということはまだ結論が出たわけではないですし、それではタミフル以外なら絶対大丈夫ということでもありません。また最近ではタミフルに対する耐性をウイルスが持ち始めたという報告もあります。
最近は治療薬もいろいろなものがありますので、状況にあわせて使いわけることができるようになりました。いずれにせよ軽症のうちに対処することで重症化や合併症の発症を防止しておくことが重要です。
治療薬について解説します。
抗インフルエンザ薬は有効な薬であるということははっきりしています。
ただこれらは重症化を防止する薬であって重症となった患者を治癒させる薬ではありません。
肺炎予防や入院予防には明らかに有効です。
また48時間以上経過した場合でも重症化防止を目的として有効なので積極的に使うべきというのが現在の医療のコンセンサスです。
1.タミフル
標準的な抗インフルエンザ剤です。錠剤とドライシロップがあります。
飲みやすい標準的な薬ですが、10代の青少年学童には異常行動を助長する働きが否定できないため推奨されていません。B型やH1pdm09のA型インフルエンザでは効果が得られないこともあります(タミフル耐性)。
2.ラピアクタ
注射製剤です。内服ができない、幼児や高齢者で症状の重い場合に用います。H3A型インフルエンザには兆候を示し、速やかに解熱することが多いようです。通常1回の点滴(15分ぐらい)ですが効果が少ないと2日目も行う事があります。
3.リレンザ
吸入薬です。A型にも、B型にも効果的ですが、吸入ができない幼児、高齢者には使用できません。吸入器での使用も可能ですが、5日間1日2回の通院が必要です。
4.イナビル
一回の吸入で効果があるとされていますが、欧米では有効性に疑問があるとされ認可されていません。全く効果がないとは思いませんがゾフルーザが出た現在基本的には過去の薬だと思われます。
5.麻黄湯
漢方薬の麻黄湯も効果があるといわれています。インフルエンザと診断できないが可能性があるような場合、他のウイルスにも効果があるといわれていますので使用してみるのもいい方法です。内服すると多少の興奮作用があるといわれています。
6.アビガン錠(ファビピラビル)200mg錠 RNAポリメラーゼ阻害剤
耐性インフルエンザあるいは新型インフルエンザ流行期に厚生労働省からの依頼により製造使用する。通常は使用されない。
7.ゾフルーザ
1歳以上の子供への投与が認可されている経口薬で、一回の投与で有効であることが確認されています。今後はインフルエンザの治療で中心的な薬となると大変期待されています。ただ発売されたところでもありまた子供については若干の懸念も言われていますので、ある程度対象を選んで使うことにしたいと考えています。
予防のための米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)の勧告
- 感染者に接触しない。
- 感染したら他の人に接触しない。
- 感染したら会社・学校・園等を休み外出しない。
- マスクで口と鼻を覆う。
- 手洗いの励行。
- 目・鼻・口を触らない。
接種量
3歳以上成人まで 0.5ml 3歳未満 0.25ml
接種回数
厚生労働省では13歳未満は2回接種を推奨していますが、世界のスタンダードであるWHOは9歳以上は一回接種を推奨しており、昨年からは厚生労働省のホームページにもWHOの意見として記載されています。
どいキッズクリニックでも昨年ワクチンの不足が叫ばれたのをきっかけに熟慮の結果WHOの提言に従うこととしました。
ただ9歳以上でも受験であるとか、重症喘息や先天性心疾患などのケースでは2回接種をさせていただきますので遠慮なくお申し出ください。
※PDFが開きます。PDF形式の文書をご覧いただくには、Adobe® Reader® プラグイン(無料)が必要です。お持ちでない方はこちらから入手できます。
インフルエンザワクチン接種対象者
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インフルエンザ感染により重大な合併症を起こす可能性のあるハイリスクグループ
- 6カ月から23カ月までの乳幼児 65歳以上の方養護ホーム、長期療養施設入所者
- インフルエンザシーズンに妊娠している女性
- 肺・心血管系の慢性疾患を有する成人・小児、気管支ぜんそくの小児
- 糖尿病を含む慢性代謝性疾患、腎不全、免疫抑制状態にある方
- 長期アスピリン治療を受けている生後6カ月から18歳の方
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ハイリスクグループにインフルエンザをうつす可能性のあるグループ
- 病院関係者
- 養護ホーム、長期療養施設勤務者、乳児を預かる施設勤務者
- 訪問看護等でハイリスクグループの方にケアサービスをする方小児を含むハイリスクグループの家族
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その他
- 乳児:どの月齢からでも可能ですが諸般の事情から当院では生後6カ月からとさせていただいています
- 妊婦:妊娠中どの時期でも接種は可能ですが、流産のリスクのある妊娠3カ月未満では接種を勧めないという考え方もありますので、産科の先生にまずはご相談ください。妊娠後期となると妊婦さんの免疫能の低下、おなかが大きくなって呼吸を圧迫する可能性などから重症化のリスクが高まるとされていますので、接種をお勧めします。
- 寮などで団体生活をしている方
インフルエンザ予防接種でよくある質問
1.咳や鼻が出ていますし、37.3度の微熱がありますが接種できますか
症状が軽い場合は特に問題ありません。37.5度以下なら可能です。ちなみにアメリカでは熱があっても接種することもあります。
2.風邪が治って2週間ですが接種できますか
可能です。日本では麻疹は治癒後4週間、水痘・風疹は2週間後から、そのほかは1週間後から可能とされています。これについては医学的な根拠があるかといわれると問題がないとも言えませんが、万が一の副反応のことを考えると守っておくほうがよいでしょう。なお、アメリカではこのような規則はありません。
3.水痘の子と接触して潜伏期間中のようですが接種できますか
潜伏期間かどうかはその時点ではわかりませんし、不活化ワクチンについては何ら問題はありません。生ワクチンの場合は感染可能のウイルスとバッティングすることで免疫ができにくい場合もあるかもしれませんので状況によっては延期することもあります。
4.熱性けいれんを起こしてから1カ月ですが接種できますか
通常けいれん後2~3カ月後から接種は可能です。単純性の熱性けいれんであれば小児科の専門医が可能と考えれば2週間から接種可能です。インフルエンザはけいれんや脳炎・脳症になることがある病気です。そのほうがずっとリスクは高いと考えられます。
5.抗生剤を耳鼻咽喉科からもらっていますが接種できますか
病気の状態が活動性(発熱、痛みが強い、きこえにくいなど)でなければ問題ありません。インフルエンザは季節性のものですので接種時機を失しては何にもなりません。
6.卵アレルギーといわれていますが
一部の強い反応の既往がある方を除いて、通常麻疹・風疹ワクチンが普通にできておれば問題ありません。心配な方には最初に少量注射して大丈夫なことを確かめて、その後残量を注射するという方法もあります。
インフルエンザにおける異常行動について
インフルエンザの経過中に異常行動を起こす子供さんのことがよく報道されています。個の異常行動、実はインフルエンザの治療薬タミフルの副反応ではないかという考えがあります。しかしはっきりした原因は現在のところ不明です。異常行動を防止するという意味でもちゃんと予防接種を受けるようにしてください。