2022/01/27
新型コロナウイルスが出現して2年が経ちました。今は新たな変異株であるオミクロン株が拡大・蔓延しています。オミクロン株は感染力がデルタ株よりも強く、しかもワクチン効果が2回接種後数か月でかなり中和抗体の値が低下していると考えられていて3回目の接種が強く推奨されています。また子供は今までは感染の頻度が低いと考えられていたのですが、12歳未満の子供はワクチン接種もされていないこともあってか今までのデルタ株などと比較して感染の頻度は飛躍的に高くなっており、幼稚園や保育所のクラスターの発生も多く見られています。その結果でもあるのですが、家庭内感染が急激に増加しています。その一方重症化する率はデルタ株よりー圧倒的といってもよいかもしれないー低いことがほぼ確実と思われます。いわゆる「風邪」ということで済ましてしまうこともあるでしょうし、場合によっては花粉症と思って見過ごしてしまうことだってあるでしょう。ただこれは今のところ感染者が若い人たちに多いことが関係していて高齢者に感染が広がっていくと話はまた違ってくるかもしれません。3回目のワクチン接種も開始されたのですが、かといって感染者はどんどん増えて来ています。今までは何といっても基本的に都会の病気であったものが年末年始の大移動でウイルスがまきちらされて全国津々浦々にまで感染が広がってしまいました。いくら重症化する頻度が下がったといってもその分感染者数が増加すれば医療のひっ迫は同じことになりますし、都会と田舎の医療体制は同じではありません。それどころかこのまま患者数が増加していけば医療のみならず日本の社会機能全体がひっ迫しかねないことになります。どうなるんでしょうといわれても今後のことは誰にもわかりません。
医学というのは厳しい世界で、いくら論理的に正しいことを突き詰めていったとしても、それが正しかったかどうかというのは一定時間たった時点で医療がどうなったかという現実の結果によって検証されることになります。科学的かつ論理的な仮説がすべて正しいなどということはありえません。歴史的に見ても多くの誤った仮説を修正しつつ最終的に正しい結論に至るということがほとんどです。ですから結果がどうあろうとそれを受け入れることを前提に論理的に予測できることを複数提示し、その場合どのような対処をすることで状況を打開できるかを示すことが科学の責任であると考えます。今でこそある程度の知見が蓄積されていますが初めのうちは専門家といっても経験したことのないウイルス感染症について話さねばなりませんでした。テレビでは一部それはなんぼ何でも違うだろうということを平気で言う人もいましたが、多くの人は真摯に考えてお話ししていたと思います。しかし繰り返しになりますがそれらがすべて正しかったかというとそういうわけではありません。私たちは現実に対して謙虚であるべきなのです。しかしここは論理的に正しいことを理解していただいて科学的な知見に従っていただくということが結局世の中をまっとうな方向へ導くことになるのは確実と考えられます。
今回のコロナについても当初、感染症の専門家は症状のない人がマスクを知ることにはあまり意味がないと考えていました(その原因のたぶん多くは布マスクとマスクなしの比較だったことにあるー不織布マスクは最近までなかった)し、ワクチンもこんなに効果的なワクチンが短期間で開発されて世界中で接種されるようになるとは思いもしませんでした。第5波がどうしてこんなに急速に収束したかということも誰も説明できていません。かといって科学の意見を無視してやりたいことをやったとしたらもっとみっともないことになったに違いありません。例えば例のアベノマスクやgo to・・・は、そのみっともないことの良い例です。まず3回目のワクチン接種をできるだけ早く受けることです。それが希望者にいきわたるまではやはりマスクと三密の回避、換気に留意して生活することであると考えます。
★子供のワクチン接種について
まず日本小児科学会の見解です。
1)子どもをCOVID-19から守るためには、周囲の成人(子どもに関わる業務従事者等)への新型コロナワクチン接種が重要です。
2)基礎疾患のある子どもへのワクチン接種により、COVID-19の重症化を防ぐことが期待されます。基礎疾患を有する子どもへのワクチン接種については、本人の健康状況をよく把握している主治医と養育者との間で、接種後の体調管理等を事前に相談することが望ましいと考えます。
3)5~11歳の健康な子どもへのワクチン接種は12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義があると考えています。健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(発症予防等)とデメリット(副反応等)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要です。
4)接種にあたっては、接種対象年齢による製剤(12歳以上用と5~11歳用のワクチンでは、製剤・希釈方法・接種量が異なります)の取り扱いに注意が必要と考えます。また、集団接種を実施する場合においても、個別接種に準じて、接種前の問診と診察を丁寧に行い、定期接種ワクチンと同様の方法で実施することが望ましいです。
またこれは日本小児科医会の見解です。
わが国の小児における新型コロナウイルス感染症の状況は、成人に比べ感染者数がはるかに少なく、感染者においても症状は極めて軽いか無症状の場合が多い。 一方、5歳~11歳の小児に本ワクチンを接種した場合の効果や副反応に関するデータはわが国には存在せず、諸外国においてもその数は限定的である。 現在接種が想定されているワクチンにおいては、その効果はかなり高いといえるが、副反応としての、接種部位の疼痛・発熱・頭痛・倦怠感などは、この年齢に接種されている他のワクチンと比べ、むしろその発現率は高いと想定され、接種時に一定数起こる血管迷走神経反射、接種後に稀に起こる可能性のある心筋炎・心膜炎などについても十分な注意と対応が必要である。 本ワクチンの効果は感染予防のためというよりは、むしろ発症時の重症化予防のためのワクチンとの意味合いが大きいことから、そもそも重症化することが稀な小児期の新型コロナウイルス感染症においてのワクチン接種の意義は成人・高齢者への接種と同等ではないといえる。 一方で年齢が低い小児であっても、感染してしまった場合の他者への感染リスクの増加、10日以上にも渡る行動制限の必要性と困難性などを考慮すると、新型コロナウイルスの感染は今以上に小児の日常的な生活や環境を奪うことにもつながり、子どもたちの心身への影響は計り知れない。 これらを総合的に勘案した場合、具体的な接種方法などについて十分な議論と準備の上で本ワクチン接種を実施することが求められる。
もちろんワクチン接種は受けるに越したことはありません。今のところ子供に使えるコロナの薬がない以上、子供の社会がまっとうな形で動いていくためには何らかの形で一定程度以上のワクチン接種-つまり集団免疫が成立するくらいのーは不可欠であると考えます。確かに全員に打つかどうかは議論の余地がありますが、やはり何らかの基礎疾患がある子供さんは優先的に接種を受けるべきですし、普通の子供さんでも万が一感染してしまったり濃厚接触者となって行動制限を受けることになるより接種を受けることのメリットは大きいと考えます。接種量を減らして打つことで痛みや熱、倦怠感などはある程度ですが改善できるであろうと考えられます。なお小児科医会の見解で言及されている心筋炎などについては統計上リスクはほぼないと考えられています。日本では少ないとはいえ、重大な合併症であるMIS-C(多系統炎症性症候群)についても予防効果がある(確定的ではない)とされています。
また舞鶴市がどう考えるのかは知りませんが、子供たちへの心身への影響などを総合的に勘案するのであればやはりいつも見てもらっているお医者さんに個別接種をしていただくのがよいということは明らかです。その場合可能であれば私も個別接種は積極的に参加していきたいと考えています。
★今後どうなっていくのだろうか
ここからはたぶんこうなるのではないだろうかと私が思っていることです。まあ当たるも八卦当たらぬも八卦かもしれません。デルタ株などに比べてオミクロン株は鼻やのどで増殖するといわれています。つまり低温で増殖しやすい。デルタ株は肺で増殖するということはつまり若干高温であっても増殖する力があるということになります。デルタ株は夏にも大流行しましたがオミクロン株は夏には結構力を失うのではないかと考えています。また、そのころには皆さんの3回目のワクチン接種もある程度進んでいてオミクロンについては何とか抑え込めているのではないかと思っています。もちろんまた新たな変異株が出現したり、政治が受け狙いでバカなことを思いついたり、そのほか何らかの「想定外」のことが起きる可能性がないわけではありません。またオミクロン株による後遺症については今後の検証を待たねばなりません。科学的な思考は先のことを予測はできても透視できるわけではありません。その時には状況をきちんと把握してそれを粛々とどう解決していくかを考えていくしかないのです。今は現在有効であると考えられていることを大きく逸脱することなく、しかも何らかの形で人とつながることを続けていくことを模索する時期であると考えます。